真の働き方改革に向けて、必要なことは何か
公益社団法人日本看護協会により2017年に実施された「看護職員実態調査」によりますと、職場環境について、
①どんな要素を重要と考えるか
②その要素を現職場(離職中の場合は直近の職場)
が満たしているかを尋ねたところ、「重要」(「とても重要である」と「やや重要である」の合計)の回答 が最も多かったのは、「職場の人間関係が良好」で 95.6%であるのに対し、「満たしているか」については、53.9%でした。
また、ニーズと実態のギャップは、特に「納得できる収入が得られる」「休暇をとりやすい」「超過勤務が少ない」「必要に応じて勤務形態を変更できる」で大きく、「上司がサポートしてくれる」については「重要」との回答が90.5%に対し、45.4%と大きな差がありました。
国が進める働き方改革によって、2019年4月1日から保健・医療・福祉の分野においても、働くルールが変わり、労働時間、休暇取得、賃金の是正など、看護師にとってもより働きやすい環境となっていくことが期待されています。
しかし、9割以上の看護師が「重要」としている「職場の人間関係」や「上司のサポート」は、働き方改革による法令によって満たされるものではありません。どんなに働くルールが変わり、労働環境を規則で保障されるようになったとしても、スタッフ同士や上司のたったひと言が、職場環境の満足度やモチベーションに影響を与えかねません。
たとえば、育児短時間勤務の制度がスタートした当時、「復帰しても楽できていいね」「なるべく仕事を残さないで帰ってね」「私は周りが怖くて利用できない」などの言葉により、育児短時間勤務を利用する者がいなくなった職場もあったそうです。
だからと言って、それぞれの当事者を擁護したり批難するつもりはありません。
ですが、このような「言った、言われた」というような人間関係のトラブルが当事者同士のコミュニケーション能力の低さから起こるものだとしたら。
また、上司の関わりによって、スタッフ間の人間関係をより良好にできるなら。
臨床現場において看護師の労働環境の改善、離職率の低下への仕組みを構築するために提唱されたワーク・エンパワーメント理論があります。
この理論を実践するにあたり欠かせないのが上司のコミュニケーション能力で、そこに働く看護師一人一人の想いや可能性を引き出し、エンパワーメントできる技術とも言えます。
上司の何気ない一言がスタッフに与える影響の大きさを改めて考えてみたことはありますか。
TCS認定コーチ
白澤るり子